まるで犬の天使 ↓ こうしていると・・・
日課の午前散歩に行く時間が、所用によりいつもより一時間ほど遅くなった。
ちょうどよい天気だったのだが、最近出会わなかった犬友達に出会った。ラッシュより半年ほど年下の犬である。
「おはよう。久しぶりだね」
気軽に声を掛けるも、向こうは何となく浮かない様子。
犬は私の足元にきて飛びつくので、しゃがんで「元気にしてた?」と耳の後ろを撫でてやる。犬の感情はびっくりするほど安定しているもので、人間のように振れ幅が大きくないと聞いたことがある。
彼女は慌てて「ごめんね」と言いながら、犬を引っ張り戻そうとする。「汚れるでしょ!」と犬を叱るので「大丈夫、大丈夫」と笑う。
実際、犬の散歩に汚れたら困る格好では行かないわけで、犬の毛が付こうが、土の付いた足で飛び掛かられようが、私は気にしない。
・・・と思っていたのだが、彼女がぽつりと言った一言に少し驚いた。
「実は犬のしつけのことで、苦しくなっちゃって・・・」
どこといって特に困ったところのない、人見知りしない活発で陽気なかわいい犬なのである。
「しつけって、○○ちゃんはきちんとしてるでしょ?」
しかしママの顔は暗い。
うん? 誰かに何か言われたのかな・・・と感じた。
ママ友ならぬ犬友?
「しつけがなっていないって言われて・・・その人のいう通りだから反論もできなくてね・・・」
そう言って笑って見せるのだが、ママの目を見ると悲しそうなのだ。
これって、ママ友の犬友版なのでは? と思った。
ちなみにママにはまだ子供さんがいない。
ママとは散歩の方向が一緒なので、自然に歩き出す。
ママは遠回しに、ある人のアドバイスを良かれと思って言ってくれている・・・と聞いていたのだが、今はその人と会うのが息苦しくて散歩の時間をずらすようになったと話し始めた。
なるほど、会わないはずだ。
「とにかく元気でよかった。全然会わないからどうしてるのかなぁって思ってたんだよ」
「ありがとう」
余計なお世話だと思いながら言ってみた。
「他にいい例えが思いつかないけど、○○ちゃんは幼稚園に通ってるわけじゃないし、そんなに気に病むことないと思うよ」
ママははっとしたように私を見たので、私は笑顔で優しく頷いた。
「・・・だよね」
しばらくして、ママがそう言った。
「そうだよ」
私はもう一度頷いた。
ママ友という言葉には、友が付いているがもちろん全員が友人ではない。中には合わない人もいるが、子供の為にさらっと付き合って軽く受け流せばいいだけで、疎遠になる人、仲良くなる人は自然と交流が深まる。人のご縁とはそういったものだと思う。
犬を家族同様に思うのは愛犬家ならわかることで、家族を否定されれば誰でも傷つく。相手の犬が完璧に見えるならなおさらだろう。
お互い同じ犬を飼っている立場なのに、そういったことを言う人もいるのか・・・と少し驚く。
要するに
ママは、犬のしつけを遊びながらする人
相手は、スパルタ式でいく人
その違いで、パピーウォーカーとかでないなら、私は「良き家庭犬に育てる」それで充分だと思う派。たまたまママと同じ方針で、だからママに共感したのだった。
私はママに「最低限のしつけさえできていれば、気にすることないよ」と重ねて言った。「大切なのは家族が幸せに暮らすことだと思う」
別れ際、ママは「ありがとう」と笑顔が見せた。
「またね」お互い手を振るって別れた。